★柏木敬太の新スローな旅シリーズ。 魂の贅沢を求めて、バリ島を巡る。
地上最後の楽園は、今日も微笑んでくれるかな。
ボロブドール近辺の小さな遺跡を見て、
ジョグジャカルタに戻りランチブッフェの会場に。
日本の田舎の分校のような校庭に、壁のない建物。
到着すると、待ちかまえていたかのようにジャワ舞踊と楽器の演奏が始まった。客は自分一人。おそらく、このあと、ほかのツアー客もやってくるのだろう。ゆっくり食事しても時間が余る。ガイドに本物のバテックが欲しいというと、ランチの店から程近いローカル商店街の布地卸屋に連れていってくれた。日本語も英語も通じない。ここで買ってもガイドにコミッションが入るとはおもえないが、それでもいのか?商品の説明はラシーンが通訳してくれたので、値段交渉だけ自分でやった。「ラク!」。強気の店ではあったが、まとめ買いで、3割引、ちょっと名が通った正真正銘のバテックを手に入れた。
体がだるいので、車でマッサージ屋を案内してもらう。
この店は、日本人ツーリスト御用達っぽい。日本語メニューあり。ガイド控え室あり。意味もなく写楽のタペストリー。肝心のマッサージは部屋により料金が違うが中身は同じという。それなら一番安い部屋でいい。
暗い廊下を歩き、ベッドがひとつ置いてあるだけの暗い部屋に通される。
若いのかおばちゃんなの判断しづらい女性に、1時間みっちりやってもらうが、上手くもなく、かといって下手でもなかった。それでもむくんだ足には気持ちいい。標準的なマッサージコース1時間10ドル。まあ、そんなものか。
多少からだが楽になったところで、次の遺跡「プランバナン」へ。
こちらもボロブドール同様世界遺産のひとつ。ヒンドゥー教の寺院だ。
高さ47Mまで石を積み上げた寺院だが1584年の大地震で崩壊したものを、その後植民地化したオランダが復元修復したという写真が残っていた。何万個ものの石を、ひとつひとつ積み上げていく気が遠くなる作業だ。
そしてこの遺跡見学の1週間後、再びジャワ島は大地震に見舞われ、プランバナンは崩壊した。
現在は学術調査チームが被害を調査し復元を予定しているという。
遺跡の観光客で喰っていたお土産屋の人々は無事だろうか。
遺跡の閉鎖期間はどうやって生活していくのだろう。
しかし、彼女らはたくましい。砂利の運搬でもなんでもやって、観光客が戻るまで耐えているに違いない。
こんど行ったら、むやみに値切るのはよそう。宗教の世界では、何度も繰り返される大地震を試練というのだろうか。
プランバナンをゆっくり観光し、ジュース売りのおばちゃんと、お互い日本語とジャワ語で会話し、時間つぶしのお礼に現地生産のポカリスエットを日本のコンビニ価格で購入して(1000ルピア)、ゆっくり飲み干しても、出発までまだまだ時間は余っていた。
夕方になり、体調はさらに悪化の傾向。
ここは一発、ジャワ島の強力なケミカルな薬を飲んで、バンバンに副作用でラリってでも病気を治そうと、地元の薬局によってもらう。
インドネシア語を話すエネルギーもないため、ガイドに任せて、薬を選んでもらう。あとでよく見ると、「ジャムー(漢方薬のようなもの)」と書いてあるではないか。もっと即物的な薬が欲しかった。
不思議なレストランで時間つぶし
飛行機の時間まで2時間以上ある。バリの宿へ戻るのが10時過ぎのため、軽くお腹になにかいれおくことに。ラシーンおすすめのインドネシア料理の店へ連れて行ってもらう。
外観は中華風。中にはジャワの王室の流れをくむオーナーの大きな肖像画が。広い店内は赤一色。そして客は私だけ。店内の小さなステージでは影絵の芝居「ワヤンクリッ」が始まった。自分のためだけに開かれる影絵の芝居。まさに王様気分。しかし、料理はイマイチ。OGステーキをオーダーすれば肉がないという。
「・・・」
「それじゃナシゴレンスペシャルとピール」
「えっ。ビールもない」
「じゃあ、コーラ」
派手な店構えとは裏腹に、「ここは本当にレストランなの?」というくらい、食材のストックがなく、流行っていないのがビシビシ伝わってきた。(ビールがないのは宗教上のこと)
食事を済ませ、空港へ向かう。
といっても空港入口の店だったため、3分で到着。
最後に、ラシーンが「自分のガイドがどうだったか、評価をくれ」と紙を渡した。
そうか、代理店経由のツアーだとこういうものがあるから、ガイドは手を抜けないんだ。空港でクルマとガイドを調達しても、こんな評価システムがないから、程度の低いガイドに当たる可能性があるわけか。ラシーンの雇用問題に反映するかもしれない成績表。優しい旅人はオール5をプレゼントした。
ツアーも使い方次第では、面白い体験だった。いや、この日のエクスカージョンは個人手配で観光していたら、更に具合が悪化し途中リタイアしていたかもしれない。1日自由に使える車とガイド。しかも犯罪やぼったくりなど精神的疲労を倍増させる心配がほとんどない。移動中、車の中で安心して眠ることが出来る幸せ。具合がわるいときにはもってこいのスタイルだった。
しかし他の国で同じように現地ツアーに参加するかといえば、まずないだろう。
ボロブドールは貴重な存在だ。
冷蔵庫の中にいるような冷え過ぎた飛行機に1時間閉じこめられ、バリ島、デンパサール空港に到着した。
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