★柏木敬太の“新スローな旅”シリーズ。 魂の贅沢を求めて、バリ島を巡る。
「知れば知るほど、底なしに吸い込まれていくバリ島。奥深さの正体はいったい何なのだろう」と、興味を抱きロングステイ。夢をそのまま受け入れてくれる、魔法の島は、今日も旅行者の欲望を飲み込んでいく。写真はサヌールリピーターに人気のワルンワポ※1。その日に上がった魚を自分で選んで調理してもらう。鯛の塩焼き、イカフライ、空心菜のいためもの、エビの唐揚げ、ビール4杯でしめて1500円。ジンバラン※2のようなサンセットビューがいらなければ、こんな値段で極上のシーフードが楽しめる。ちなみに、この場所、昼間は自動車修理工場として使われている。
初めてのバリ島で食事に出かけたとき。
忘れないよう左手にマジックで書いたおまじないは「じゃがんぶだす」
料理を注文するとき、これさえ言えれば、ほとんどのバリ料理はおいしくいただけた。
「じゃがんぶだす」とは「辛くしないでね」という意味。ナシゴレン(バリ風チャーハン)ミーゴレン(バリ風焼きそば)、その他、どんな料理にも、いつでも、「じゃがんぶだす」とおまじないをとなえるだけで、おいしい料理に変身した。「辛くて食べられない」「無理して食べたら体調をくずした」なんていう失敗談を聞いていたので、ちょっと用心深くなっていた。おかげでバリって何食べても割と美味しいというイメージのままに過ごすことできた。
しかし、じゃがんぶだすな料理ばかり食べていて、本当にバリ島を知ったことになるのだろうか?素朴な疑問が浮かんできた。
そして、3回目のバリ島でいよいよ「じゃがんぶだす」を封印することに。
封印初の夕食は、ウブドでお気に入りのインドネシア料理の店、「バタンワルン」(写真上)。※3
ウブド3日滞在中、3日とも「バタンワルン」で食事したこともあったほど気に入っていた店。何がおいしいかと聞かれたら返答に困るけど、どれもおいしい。何を食べてもはずれがない。料理に底力がある。
東京や大阪のこじゃれたお店なら5000〜1万円くらいの料理が1000円くらいて食べられる。(自己評価)ナシゴレンスペシャルのような簡単メニューなら300円〜500円程度というのも魅力のひとつ。
しかし、おまじないを封印したとたん、羊の皮をかぶったオオカミが本性を現すように、私の味覚中枢をカプサイシン攻撃で麻痺させてしまうのではないか?戦々恐々とひと匙めを口に入れてみる。
わからない。ふた匙めは・・・まだわからない。3口4口と食べてみても、何の変化もない。いつもと変わらぬおいしさだ。
そして、料理を半分食べ終わった頃、口の中を、こびとが、おもちゃの火炎放射器で遊んでいる程度の辛さがやって来た。しかし想像していた「全身の毛穴という毛穴から玉のような汗が噴き出す」ようなことはなかった。
そういえば「じゃがんぶだす」とリクエストする前に「いにぶだす」(これはからいですか)と聞いていたことがなかった。バリ料理は全て辛いと思いこみ、何をオーダーしてもすべて「じゃがんぶだす」と伝えていた。
実のところ外国人向けの店では、最初から辛さ控えめで調理されていることが多いらしい。先入観で「全てのバリの料理は辛い」とおもいこんでいただけ。
本当に辛いのは、テーブルに座ったとたん大量の料理が何も言わずに出てくるバタン料理。しかも最初から出来上がっているので、「じゃがんぶだす」をいうチャンスがない。辛いのが駄目な人は最初から行かないことだ。それ以外では、口から火を噴くほどの辛い料理にはめったに遭遇しないらしい。ただ、安心してなんでも出されるままにしておくと、とんでもない目に遭うことも。やはり「じゃがんぶだす」はバリ旅行に必要なおまじないだ。
暑い国の辛い料理には、腐敗を防いだり、発汗作用で新陳代謝を活発にするなど、必要性があって辛くなっている。できることなら、その辛さを楽しめるようになれば、旅の楽しさも倍増するはずだ。ただ、日本で辛いものが駄目なひとは無理せず「じゃがんぶだす」と唱えましょう。
ちなみに、バリ島でも赤ちゃんは辛い料理は与えないらしい。バリの友人によると3歳くらいから徐々に食べ始め、5歳くらいでは大人と同じような辛いものも食べられるようになっているというが、あくまで友人ひとりから聞いた話。バリの5歳児がみんな、辛い料理を食べているかは定かではない。バリ島で小さい子供を見つけたら、知っている限るの単語を並べで聞いてみよう。
[あんだ すか ぶだす まかん?]「あなた 好き?辛い料理」
この際文法なんて後回し。話してみようと思う気持ちが、旅を何倍も楽しくしてくれる。
そこから発する言葉が、旅を盛り上げてくれるおまじないなのだから。
※1 ワルンワポ
サヌール通の間で評判の店。バイパス沿い。マクドナルドから南へ徒歩5分。
※2 ジンバラン
どんなガイドブックにも載っている。バリ島でサンセットシーフードバーベキューといえばジンバラン。タクシーにジンバランといえば、コミッション欲しさにんで連れて行ってくれる。
※3 バタンワルン
ウブド、デゥイシタ通り。デワンガバンガロー前。筆者おすすめの店。
デワンガに泊まり、バタンワルンで食事をするだけの1週間、最高でした。
投稿情報: あぱかばーる | 2006年10 月17日 (火) 22:38
ワルンワポで一度食事をすると、ジンバランへ行くきになれません。
投稿情報: サヌール在住 | 2006年10 月17日 (火) 22:36