★旅の流儀。観音寺 司のビバ!イタリア! 6
旅には、人それぞれの流儀(スタイル)がある。
「自分のスタイル」を見つけて旅の感動倍増計画。
ご紹介するのは、ゼロから自分で手配することで、
予算はツアー並、ゴージャス感は「セレブ風」の雰囲気を味わう、
賢いツーリストプラン。
そんな夢のようなプランを実現させた体験談をご紹介していきます。
旅のお供は、楽園を求めて世界中を旅するパーペチュアルトラベラー
「観音寺 司」です。どうぞ、よろしく。
『世界一美しい城塞都市』をめざして。
ナポリからオルヴィエートまで300km。
オルヴィエートからピサへ250km。
さらにピサからフィレンツェへ120km。
合計670Kmを、道を探しながらのドライブ。
カーナビなしでイタリアの道路を走るのは
難易度の高いロールプレイングゲームのようなもの。
次から次に、「困難な課題」が待ち受けている。
2つの観光地を巡り、670Kmを1日で走破するために、
6:00am ホテルを出発する。
朝焼けのナポリを後に A1を北へ。
走行車の流れに追従するようにクルージングしていると気がつかなかったが
スピードメーターは160Kmを指していた。恐るべしイタリアの市民ドライバーたち。
ローマを超え、オルヴィエートICまで約2時間のハイスピードドライブ。
ヨーロッパでは世界で最も美しい町のひとつとして広く知られてる「オルヴィエート」。
かつて教皇の隠れ家として栄えた中世の町並はミラノ、フィレンツェとは全く違う
忘れ去られた奇跡の町と呼びたくなるような、
空想上のイタリアの街並みがあった。
ドゥオーモ下の駐車場に車を停めて、
歩いてドゥオーモをめざす。
路地の古い石畳と煉瓦の家。
静まりかえった中世の街に、
足跡だけが響く。
最後の階段を上ると、目の前に、
現れた大聖堂の十字架。
圧倒するような美しさと、
「ほっ」とする心地よさが、
じんわりと体にしみこんでいくのが自覚できる。
昨日の混沌としたナポリのあとだからなおさら、
そう感じたのかもしれない。
それまで、イタリアゴシック建築最高傑作の一つといわれても、
なんの感心もなかったが
大聖堂前の広場の石段に座り、ドゥオーモを見上げると、
「は〜っ」と言葉にならない声が漏れ、
みるみる自分が浄化されていくような感覚に包まれた。
旅の途中で、
休憩をかねて選んだ偶然の場所が、
今回のイタリア旅行で
もっとも印象深い場所の一つになった。
ただ、何をすることもなく、
時間を忘れ、
その美しさにひたっていると、
そのうち、人の数が増え、
団体バスが到着し
普通の美しい観光地へと変わっていった。
オルヴィエートへ行くなら、早朝がいい。
車に戻り、メインストリートの細い道を進む。
オルヴィエートへ来たもうひとつの目的はワインを買うこと。
事前に、オルヴィエートの白なら、
・カルデート『cardeto』
(最高の味とは言えないが一番有名で
手に入りやすく、味が安定している)
・BIGIのオルヴィエート・クラッシコ
(美味しくありません。)
・Podere Vaglie
(ポデーレ・ヴァーリィエ)の赤
オルヴィエート周辺では一番美味しいと思いますが、
初めての人には見つけるのが難しいと思います。
という情報を在住者からもらっていたので、
カルデート『cardeto』を探す。
といっても、
車を止めた最初の店で売っていた。
1本5−7ユーロ。テーブルワインの価格だが、
日本のワインを売り物にするレストランでは、
それなりのプライスがつくだろう。
自らその地へ赴き買い付けた想い出が
ワインの味に深みと余韻を奏でる。
できることなら数泊滞在したいところだが、
次の予定が埋まっている。
中世の城塞都市を後に、 A1を更に北上する。
フィレンツェの分岐点からピサへ向かうには2つのルートがあるが
"Fi-Pi-Li" 道路を選ぶ。
地図上で単純にこっちのほうが近そうだったから。
途中、あのレオナルド・ダ・ヴィンチが生まれた
ヴィンチ村に繋がる道路があったが
往復150Kmはこの日のスケジュールからして、不可能な距離。
行きたいところにすべて行けば1ヶ月の旅になってしまう。
好奇心と欲望をふるいにかけて、
抽出されたわずかな宝石を
つないでいくような旅。
Pisa Centroで"Fi-Pi-Li" 道路を降りる。
のどかな水田をかき分けるように進むと市街地へ。
斜塔がある城壁の外にクルマを停め、中に入る。
高い塀に囲まれた
結界の中は、異空間。
テーマパークのような、
明るくにぎやかな遊園地風?
白がまぶしい・・・
ピサの斜塔がある塀の中だけが、
郊外のアウトレットのような
輝きを見せていた。
ランチBOX片手に
ピクニック気分を
楽しめそうな名所なのだが
実際は、ガイドブックの記述と
照らし合わせるだけの場所に、なってしまっている。
大型バスから、はき出された日本人観光客は
斜塔を手のひらに乗せるお約束のポーズで記念撮影してハイ、終了。
お土産を物色して、またバスに吸い込まれていった。
できることなら、
芝生に寝ころんでボーッと
斜塔を眺めていられたら
気持ちいいだろうな。
午前中までいたオルヴィエートの荘厳な町と対極にあるところだった。
"Fi-Pi-Li" 道路をフィレンツェ方面へ向かう。
ピサからフィレンツェへは
地図の上では、ほぼ1本道。
(かなりアバウトに言えば)
しかし実際は新市街地から
旧市街地への進入路が
地図でイメージしたものとは違い、
中世の迷宮に入り込んだように
行く手を阻む。
更に旧市街地は、
一方通行の規制だらけで
思うように進めない。
その上、
一見行き止まり風の
路地裏を通り抜け
もう、どうにでもなれと、
あきらめかけたところで
急に視界が開け、アルノ川が見えた。
今日の宿泊地の駐車場だった。
今はカーナビ付きのレンタカーもあるようなので
ぜひ、イタリアドライブ旅行の際には
カーナビ付きを指定することをおすすめする。
旅行中に夫婦の危機を迎えないためにも。