★柏木敬太の新スローな旅シリーズ。 魂の贅沢を求めて、バリ島を巡る。
地上最後の楽園は、今日も微笑んでくれるかな。
「ツアーで旅行に行くのは自由がきかないし、団体行動なんかしたくない!」
だからいつも個人手配で旅を楽しんでいるという人を多く見かけます。
しかし、遺跡や美術館へ行くと、
「あ〜、日本語のガイドがいると、質問できてもっと理解できるのになぁ」
と思うことも、しばしば。
そんな人達におすすめなのが、バリ島発ボロブドール現地ツアー。
申し込んだグループ単位でガイドが付き、車を用意してくれる。
一人で申し込めば、自分だけのガイド、自分専用車です。
それはバグース(よい!)
でも、「ぶらぱーはるがにゃ?(いくら)」
2007年前半の相場で、だいたい220〜270USドル。(日帰りツアー※1)
この料金の幅は、気になりますよね。
車のランク?滞在時間?
スケジュール表によれば、どれも、同じ場所を観光、ランチまで同じ場所だ。
追加で高級ホテル「アマジオ」のランチを選べるのも同じ。
それなら、安いに限ると判断した私は、一番安い現地旅行代理店に申し込んだ。
そして当日朝4時30分。外はまだ暗い。
体調最悪。だるい。声が出ない。なんだか、風邪をひいたみたいだ。
それでも、ピックアップの車はやってきた。
早朝のピックアップにまでガイドがいた。
「すらまっぱぎ〜」と、あいさつするものの、
声にならないハスキーボイス。
今日1日なんとか持ちこたえてくれればいいのだが。。
ガイド「ニョマン」は、イカツい中にもちょっとファンシーな笑顔で
「てにをは」を完全に間違いながら空港までの手順を説明してくれる。
「アナタ空港着いた。一緒は別」
「??」
「ワタシセキュリティーはいらない。ガラスの外は待つ」
雰囲気だけはわかるし、まだ眠いので、わかったふりをしておく。
このあと、ジョグジャカルタからのガイドもそうだったが、
日本語がかなり下手。その理由は、ツアーの後半でわかった。
搭乗手続きを済ませるまで、
ニョマンはガラスの向こうで相変わらずイカツい顔をしながら見ていた。
一流のガイドを目指すなら、ほほえめ!もっとほほえむんだ!にょまん!
搭乗手続き中、背後を大きな声の大阪弁熟年夫婦が通っていく。
女性「どこなん」
男性「わからん」
女性「自分でするなんてきいてへんで」
男性「……」
女性「わかれへんやん、どっちや。もうあんたがぼーとしてるさかいに」
女性「この外人のうしろに並んどこ」
ちょっと待て。私はバリ島では外人だが、
大阪の女性に外人呼ばわれされる覚えはない。
もうすこし丁寧なあいさつでもしてくれれば、
チエックインを助けてやるのに
早朝からうるさいし、礼儀はなっていないし。
こんな奴らは放置するに限る。
さっさと前方窓側の席を確保して、搭乗ゲートへ進んでいった。
「テレマカシ〜」と外人のふりをしながら。
搭乗待合い口で。
出発まではまだ、1時間ある。
待合室には誰もいなかった。頭が痛い。足はむくんでいる。
日本から持ってきた市販の風邪薬をスタミナドリンクで飲む。
副作用でぼ〜っとしている。今日一日体はもつだろうか。
うとうととしていると、背後からまたあの夫婦がやってきた。
女性「ここでええのっ」
男性「知らん」
女性「こんなんやったら、こんかったのに」
女性「ここで待っとったら、同じツアーのひとが来るさかい、うしろついていったらええんや」
相変わらず大きな声の、うるさい夫婦。
ボロブドールは単独ツアーが基本で、
見知らぬ人とのグループ行動はないはずだが、
この夫婦はどんな、ツアーなのだろう。
そうこうしている間に、一組、二組、日本人観光客がやって来た。
もしかして、ボロブドールって、日本人にしか人気がないのか??
それとも2日前の火山噴火を知らないのは、日本人だけ?
結局、小さな機内の半分は日本人で埋まった。
初めてのガルーダインドネシア航空。
シートは国際線並の広さ。キャビンアテンダントは上戸彩似のかわいさ。
やるじゃんGA!。体調不良も一瞬忘れさせてくれる。
1時間ほどでジャワ島ジョグジャカルタに到着。
着陸寸前に見えた火山からは、白い煙が上がっていた。
機内の新聞には赤々と溶岩を吹き出す写真が一面に掲載されていた。
火山が噴火したのはデマではなかった。
クレジットカード自動付帯の保険は
自然災害でも降りるのか、少し不安になる。
ゲートを出ると、私のネームカードを持った現地ガイド
「ラシーン」が待っていた。
ラシーン曰く、ボロブドールと火山は23km離れているし、
アスラの日(ジャワカレンダーで定めた日)にお供え物をして
火山を沈静化させるので大丈夫という。
ん〜、ジャワの神様お願いします。と苦しいときの神頼み。
ジョグジャカルタの街を抜け、ボロブドール遺跡へと向かいながら、
ジョグジャの街を説明をしてくれる。
「ジャワ島は、いしゅらむ教が多いので家に門がありません。」
「バリ島は、ひんじゅう教なので家に門があります。」
「ジョグジャは昔インドネシアの都がありました(自慢)」
初めて見る街は、それだけでおもしろい。
いろいろ質問してみる。
「あの分譲物件はいくらくらいするの?」
「あれはエリートの家だから3億ルピア(3000万円)ね」
「普通の人の家はいくらくらい」
「普通の人は3000万ルピアくらいからあります」
アバウト300万円。バリより高い。
都会だから? なんといってもインドネシア第二の都市。
しかし、バリ島より赤道に近い分だけ、長く住むには暑すぎる。
市街地を抜けると、川で砂利をすくっている人をよく見かけるようになった。
1日がかりで、トラック1杯になるまで運んで15万ルピアだとか。
男も女も、関係なく運んでいる。
大変だが15万ルピアが魅力で、多くの人が従事しているそうだ。
車は1時間弱で地球最南端の仏教遺跡ボロブドール遺跡の入口へ到着した。
8〜9世紀に造られたといわれている。
ボロブドールそのものが巨大な曼荼羅になっていて、
5つの方形の基壇の上に3つの円形基壇が載る
須弥山のようなピラミッド構造をしている。
写真を撮ろうとすると、
「ここより最後の場所のほうが、きれいに撮れる」と教えてくれた。
これぞ、ガイド効果!個人旅行ではこういう情報がないため
いきなりパチパチ撮ってしまっていただろう。
下の基壇から上へ、煩悩、色、解脱の順に上がっていく。
回廊の壁面には仏陀が生まれ出家し、
悟りを開くまでの人生がレリーフに描かれている。壮大なストーリーだ。
仏陀の一生については、手塚治虫の「ブッダ」を読んで興味を持ち
学生の頃、数冊読んでみたことがある。
日本で生活していると、日常生活で
宗教を意識する事はほとんどないが、
こういう場所で、過去の記憶と重なることがあると、
「仏教徒皆兄弟」のようなつながりを感じてしまう。
ガイドのラシーンは、覚えきれないほどの解説をしてくれるが、
日本語があいまいで、ほとんど頭には入ってこない。
最上段まで登り、休憩をとる。なんせ暑い。その上、体調最悪。
コンディションが良いときに来ていたらもっと説明が理解できたのにと、
軽く後悔していると、
近くにとても理解しやすい日本語で説明するガイドがやって来た。
ラシーンもおなじようなこと言っていたが、ガイドが違うと、
脳みそにスルスル入ってくる。
そうか! ガイドのレベルが微妙なツアー金額の差だったのか。
これからツアーを申し込むときには、
ガイドの日本語レベルを確認した方がよさそうだ。
ただラシーンも悪い奴じゃないし、一生懸命なので許してやろう。
ゆっくり休憩していると、なんとまた、あの夫婦が、やってきた。
たしかに、8名ほどで団体行動をしている。
ツアーの旗には、有名な格安旅行代理店の名前が。
そうか、日本から格安ツアーで申し込むと、混載ツアーになってしまうのか。
なんとなくナットク。
関西弁夫婦ご一行も休憩時間となり、
なぜか自分の近くに座り、ツアー同行者に
相変わらず大きな声でしゃべりはじめた。
女性「にいちゃんはどこからきたん」
女性「海外旅行は何回目? ふ〜ん。はじめてなん」
女性「うちらもう、何回もいっとるさかい、なんちゅうことあれへんけどな」
女性「ほなバリ島に戻ってから一緒にどっか案内しょうか」
朝、空港で超弱気な会話をくり広げていた女性は、
同じ日本人の初心者がいると、態度一変、
強気のベテラン気取りでその場を仕切っていた。
恐るべし、関西おばちゃんパワー。
しだいにうるさくなったため、
この場を切り上げて次の場所へ向かうことにした。
(続く)
(※1 2006年ジョグジャカルタ地震でガルーダインドネシア航空のフライト数が減っています。
日帰りは予約が入りにくいときがあります)